アートアニメから始まったカウベルと私としては行かねばならぬ特集でもあった。1日目は川本喜八郎。その名前をよく知るものの、きちんと見ねばという使命感。『三国志』はなんとなく見ていた記憶はある。いずれも人形の目と手の動きにくぎ付けに。
「今昔物語」から着想を得た『鬼』、「安珍清姫」題材の『道成寺』、能「求塚」からの『火宅』、人形であるという前に、不条理しかないお話と終わり方。悲しい、哀しい、救いようのない話。これを題材に選び人形に演じさせた喜八郎に尊敬しかない。
鬼は、年老いた肉親は子供を襲います、というオチ。道成寺は、ちょっと見かけた男性に恋をしてその晩夜這いかけて振られたら追いかけて焼き殺すぜという元祖ストーカーなお話。火宅は、まったく悪いことしてないむしろ仏に仕えている女性が二人の男性を袖にしたというだけで地獄に落とされちゃうという、なんでなんでな話。
人形への光の当て方がいい。そしてなによりも手と目の動きが生々しい。人は目と手で生きているんだと思わせる。
「人形は人形ではない。魂が入ってこそ人形になる、人の形になるのだ」とどなたかが言っていたような。「魂とは何か」ということも真剣に捉えてしまう川本劇場であった。
『花折り』(1968年 / 14分)
自主制作作品としてつくられた川本初の人形アニメーション。
・『鬼』(1972年 / 8分)
「今昔物語」に想を得た人形劇。アヌシー国際アニメーション映画祭受賞作。
・『詩人の生涯』(1974年 / 19分)
安部公房原作 労働者と資本家の格差を詩的に描く。切り紙アニメーション。
・『道成寺』(1976年 / 19分)
有名な『安珍清姫』伝説を題材にしたストップモーションアートアニメ。
・『火宅』(1979年 / 19分)
原作:能「求塚」。川本人形アニメーションの1つの到達点と見なされ評価も高い作品。
原作:能「求塚」。川本人形アニメーションの1つの到達点と見なされ評価も高い作品。
2日目は岡本忠成。あまり知られた名前ではないが、作品を見ると、あああの方か、となる方。「チコタン」は、軽快な音楽と好き好き好きな歌詞にのせて、このノリかと思わせて、落とす暗転。ちょっと待て。ちょっと待て。思考停止と息をのませるアニメの書き方。
サクラより愛をのせて、はこれまたタイトルとは真逆のオチ。落とされた側に少し同情すら覚えるオチ。
虹に向って、は最後がハッピーエンドでほんとよかった。救われた唯一のお話ではないか。
・『チコタン ぼくのおよめさん』(1971年 / 11分)
同名の合唱組曲を題材に、独自の様式で描く初のセルアニメーション。
・『サクラより愛をのせて』(1976年 / 3分)
痛烈なマナー風刺作品。
・『虹に向って』(1977年 / 18分)
渓谷に橋を架けた恋人たちの物語を岸田今日子のナレーションが表現豊かに綴る。
・『注文の多い料理店』(1991年 / 11分)
原作:宮沢賢治。店の奥に広がる迷宮のイメージは圧巻。
・『おこんじょうるり』(1982年 / 26分)
東北の山村を舞台に浄瑠璃で病を治す狐と老婆との交流を描く。
31日は「JUNKHEAD」上映。これは絶対、戦士に見てほしいと両親で説得して見に行かせました。