かれこれ5年、10年くらいの悩みが下着である。
出産後は腹を戻さねば!と高い矯正下着を惜しげもなく買ってしまったが、その時限りであった。
それから数年たち、子供に手がかかり、自分が身に付けるものは近所のショッピングセンターで販売している適当なもので済ませてしまっていた。「これはいかんなあ、いかんいかん」と思いつつ、もう誰かに見せる下着でもないので、おざなりでござった。安い下着を着けている自分に自信があるはずもなく、毎日多忙という言い訳で過ぎ去っていたのである。
40も過ぎるとたるむたるむたるむ。たるむたらむれたらむれば…的な活用もおぼつかないくらいに。快活ママ友のようにフィットネスクラブにも通えないし、歩かないし、走らないし、山も登らない私。それは体がたるむべきしてたるむものだ。ぺったんこ胸なのに上等に下がっていく自分の胸が本当にうらめしい。これが老いというものなのか、とうなだれる鏡前。
自分の運動不足はおいておいて、下着からはみでるお肉なんてものをみて、もしかしてこれは下着のせいでは…という妄想に陥った私である。
そうなると一刻も早く対策を立てねばならぬ。ネット検索すると、安い。やたら安い。ん?ん?ネットで表示されている金額よりはるかにワンコインな価格の下着を着けていた私が思うのもなんだが、安すぎる。でもかわいい。かわいい下着だ。いいね!を押して、ショップサイトへ移動しつつも、どこかで安すぎることがひっかかり、店舗の会社概要をクリック。海外の会社であった。海外の会社だから悪いというわけではない。単なる勘だ。すると、ほかのひとが「悪いね!」スタンプを押している。なんだろうとクリックすると「商品が届きません」コメントの嵐。なるへそ、ギリギリセーフ、飛びこまずにいてよかった。
商品の価格とは、自分がこれなら出してもいいと思う値ごろ感だと思う。これが1000円なら出してもいい、1万円ならそんなものではないか、3万でこれなら致し方ない、的な。自分の価値観との対話だ。
もとい、5年ぶりくらいにきちんと下着を買うのである。どうしよっかなーと頭の片隅に残しつつ、オリーブオイルを買いに地元で一番大きなショッピングセンターへ行った。オリーブオイルを買うはずが途中で靴下を買ってしまい、その店がたまたま下着を販売していてたまたまセールであった。まあまあの価格だったので購入しようかと手がのびたものの、手がとまる。価格は悪くない、しかし下着デザインが若い。ピチピチのきゃぴきゃぴだ。うーむ。そしてたまたま別のショップへ行ったら、トリンプのショップだった。トリンプ、女子なら一度は聞いたことがある下着ブランドである。悪くないだろう。
店員さんに声をかけたら、胸を図りましょう、と試着室へ通された。かわいい店員さんで、よく見たら名札に初心者マークがついている。たぶん娘のほうが年齢近いくらい若い子である。こちらがドキドキである。
バストを図ってもらい、気になった下着をいくつかもってきてもらって試着。試着したら「ちょっといいですか」とかわいい店員さんが、ぐいっと試着室に入ってきた。フェイスガードに、手袋だ。そしておもむろに脇に手を入れ、私の横にはみ出たお肉を内側をぐいっと寄せてくれる。お、おばちゃんの胸を……申しわけない…気持ちでいっぱいのおばちゃん。若い子なのに、仕事とはいえたるんだ見知らぬおばちゃんの胸を触る仕事だなんて、この上なく申し訳ない。
若い店員さんは「これならもうひとつ大きい方がいいですね」といって、サイズ別を持ってきてくれ、それを試着した。
エンジェルフィット。
わきのお肉はでてしまうものの、なにこれ収まりの良さ…。
「かわいいですね」「この色もお似合いだと思います」
久しぶりにカワイイって言われちゃった…しかも若い子に。と乗せられるおばちゃん。
どのみち下着を買うと決めたのだ。ネットで探す時間が無駄だ。それならと、すすめられるままにすべて購入した私、結局、数万円越え分の下着(上下)を買ってでてきてしまった。
オリーブオイル1本を買いに入っただけなのに…。
自宅に戻り、再度、新ぶらじゃーを装着、そしてTシャツ。
!!! なにこれ、めっちゃ形がよく見えるシルエット…!
無いはずの胸が浮かび上がってきた感はんぱないバストライン。
ありがとう、若い店員さん。一生懸命の接客は、おばちゃんの胸を再現させたわよ!
ということでとても気持ちよくブラジャーをつけています。
そんな買い物のお話でした。