複製とも違う、コピーとも違う、クローンだそうです。
スーパークローン、近未来SF的な名称に及び腰な私でしたが、この系はきちんと解説付きじゃないとなと思ってギャラリートークに合わせて行ってきました。
パリのノートルダム寺院の火災のように焼け落ちてしまったけれども、事前に研究資料として残しておいた3Dデータが再建の役に立つとか、調査研究はやはり地道にしておくものなのです。
高句麗の洞窟壁画は、現在は北朝鮮にあり、いつかの洪水で流されてしまったという噂もありました。事前に調査研究をしていたデータをもとに形、大きさを復元したのが今回の展示です。
莫高窟は、私が大学時代にこれでもか!というくらい授業を受けさせられた…(単に当時の先生の調査研究だったにすぎないが)ものです。ここで再度出会うとは。想像を絶する場所に、想像を絶する数の窟が存在する莫高窟。脇侍菩薩をずいぶんを勉強しました。展示は暗くなっていて、現地と同じく日の光が差し込む仕掛けをしているそうです。
第二次世界大戦にドイツ軍が壁画をひっぺ返して持ち帰るということを行っていたことは知らなかった。戦争と美術の関係を垣間見られ、こちらのアプローチも興味深いものでした。
浮世絵は、動いてました。ふるふると動かしていました。漫画チックなルーツを十分に感じられます。動かしやすいんですかね。動くととたんにキュートなしぐさになる浮世絵です。試みは「浮世絵に香りをつける」ということ。浮世絵から高貴な香りが漂っておりましたが、5枚くらい同時に匂うものですから、室内が臭くて残念な展示空間に。一枚でよかったんじゃないかしら。
ゴッホの絵も動いてました。正確には背景が動いていたけれど。
復元と修復とクローンとの違い、を知りたかったのですが、そうではなかった…。後半は、香りのする浮世絵や動く絵画、絵画から像をとりだしたら、という「新しい見せ方」のほうに表現が向いていたのでちょっと残念。こういった仕掛けを含めてクローンなのかもしれません。
私はもう古い人間なのか、触れられることにテンションが上がるほうではありません。絵画や彫刻と向き合って、絵筆のタッチ、色のかげり、描いていたころの時代背景に想いを馳せ、想像しながら見たい派でした。