コマンドNや秋葉原TV、若い頃の活動を見てきた私にとって、ようやく会えた中村政人さん。すっかりディレクターの要素を持っていたけれども、熱量は高かった。
中村さんのお話は、アートを軸にしつつも、ビジネスにぴったり当てはまる話だった。事業計画がありビジョンがあり、動かすためにどう人と関わるか、補うか、立ち位置と価値を見出すか。行政や社長にも聞いてほしいお話だった。アートのことはよくわからん、というおっさんを一蹴したい。ここは文化をビジネスに、文化を教育に、どこかつながっているものなのに、繋げきれていない現状がある。すごく大事なところだ。
アートに触れる人のレイヤーとしては私はガチな実存アートである。このレイヤーの分け方も組織を回すにはわかりやすい分け方のように思えた。仕事のことを考えない経営者は実存アートの人と同じレベルあると思う。
講演を聞きつつ、自分に、周囲に置き換え、引き寄せ、戻す。地方と都会の「ことをなす規模と経済力」の差は否めない。思想や表現を実現するためには産業、経済、政治が関わりようやく為せることもある。
この日の昼は、はぴりゅうフェスタで藤田さんの公演を成功させよう、という初対面の人たちとチケット販売。これは五角形の欠けを補うスキルシェアだったのだと。
中村さん、この講演を本にしてくれないかな。
東京芸術大学で講義に参加できると聞いた。
東京ビエンナーレ、福井で地方でできることがあるなら協力する。
===以下、私のメモと解釈と
中村少年が心打たれた作品はウォルター・デ・マリアの作品。1977年作、ドクメンタにて。5000万円かけて町の人が地球に杭を打った作品。
中村政人さんの作品と言えばCVSプロジェクト。コンビニエンスストア・プロジェクトのこと。セブンイレブンやミニストップの看板を展示する。世界中どこに行ってもある「マクドナルドのMマーク」を展示する。その画一性とは。大手企業に許可をとるところもすべてアート作品としてとらえるプロセスアート。中村さんはこのプロセスを大事にしている。
▼価値とはなにか。
鉛筆の五角形をイメージして考えよう。
- 5つの力
- ビジョンを描く力
- 運営する力
- つながりを生む力
- 計画する力
- 気づく力
アートマネジメントには、タテ社会(行政、企業、教育、地域など)に横串を指す人材が必要。アーツ千代田3331の場合、宍戸さんがその役割を担っている。
▼地域因子の話/ゼロダテの場合
例)高校生を地域因子と考えた。卒業後県外へ出て行ってしまうかもしれない彼らに、地域に関係する記憶を持ってもらおう、作品の一部になってもらおうと記憶と作品と重ねる。
例)閉館したデパート。しかし一定数の人には街ぶんのコアな部分で記憶でもあった。このデパートを会場にしてイベントを続けていった。「このデパートが無くなってしまう絶望感」、絶望感を受けとめる行為。
例)のの 会いに行ける秋田犬。を発信。
例)空き家や空きビルは室内資源である。御成座は単なる映画館ではなく、文化資源である。何とかしたいと思い3年続けたら、3年後に映画館をやりたいという人が現れた。逸脱の瞬間。これぞ逸脱の創造プロセス。
観光産業ではなく、日本文化の一つとしてやる意義を見出す。
地域因子への連続的な刺激。どういう刺激を誰が与えていくか、地域という意識に自分を置く。意識化された日常と対峙すること。
プロセスに区切りはあるが終わりはない。サステイナブルな意識を持つ。育てることは批評すること。-これは何か、どうしてか、リサーチする
▼アートの段階
- 気晴らしアート
- レクリエーションアート
- 経験アート
- 体験アート
- 実存アート
ピエール・ブルデュー(フランスの学者)を学ぼう。
身体化された文化資本が大事。礼儀やセンスは20歳までに身に付けるもの。学ぶものではない。自然と身に付いてくるものがある。努力して得るものではなく、普通の生活の中で、自然に身に付ける人間力とは、現在どこにあるのか。
文化を成長させるために、因子が成長するビジョンを描くこと、それを具現化するアクションを起こすこと。ゼロダテの場合は高校生=因子
▼中村政人さん
コマンドN、秋葉原TV…1000台以上のテレビをジャックして放映。街の中で気づいた人だけが気付く。
自分たちで場所を作る、活動を生み出すことをしてきた。
アーツ千代田3331は自主財源でやっている。「アーティストイニシアティブ」ファースト。そして全ての空間をメディアハブとする。スキルシェアという考え。自分でできることをやる。人件費が浮く
4名で20万ではじめたことが現在2-3億の売り上げを持っている。
千代田区に家賃を支払うシステム。千代田区としては、家賃をもらいながら文化発信ができるというメリットがある。
▼AIR とAIF
アーティストインレジデンス と アーティストインファミリー
家庭がホストになるという仕組み。
アーティストには専門性のある活動を持ってもらう。瞬発力のあるアートを行いたい場合は大御所を呼ぶ。そこまでなくてもいい継続性のある市民性も兼ね備える。
▼ゲニウスロキ 街の新陳代謝
純粋×切実×逸脱
純粋は作品への問い
切実はエネルギー
逸脱は抜けた状況、芸術的な状態
PDCA の AはAWARENESS 気づきのことを指す
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話も上手で説得力のある内容ばかりだった。大館市での運営の難しさは察するが、それが地方と東京の違いもあるなと感じた。とあるイベントで秋葉原で集客2万人、地方だと2000人がせいぜいだ。しかしおそらくかかる費用(予算)は200万、というのは変わらない。
私がはっとした言葉は「絶望」である。慣れ親しんだ場所が消える、そこを掃除する、それは絶望を埋める作業だと話していた。そうか、私が持つリノベーションへの違和感はこの言葉にあるのかもしれない。そして美術作品にもいえて、必ずしも美しくきれいな作品ばかりではない。私が触れてみてきた現代美術は往々にして痛々しいものだった。人は大小はあれどもどこかで絶望を経験したことがあるもの。ああ、そか、アート鑑賞はどこかでなにかを埋める経験なのかもしれない。
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アーツプロジェクトスクール
https://artsprojectschool.jp/
美術の授業ってなんだろう
http://research-project.geidai.ac.jp/?fbclid=IwAR1vfUFhObTjobrl1kRGTpKYFUNInqV5xTBkNFGtUDfY6WdhKBMZzZRiUC0
ALLOTMENT
http://allotment.jp/
中村政人研究室
http://m-lab.org/