寒風吹きすさぶ中、てくてく歩いて取材でした。駅前に店を構えて31年と44年の老舗の飲食店。どちらのご主人にも共通しているのが、外気とはうってかわった「おおらかさ」。
仕込み時間や休み時間を割いて、取材に対応してくれて、それでも嫌な顔せずに、むしろ「よー、きたのー」と歓迎してくれる。恐縮の限りです。
雑誌やネットで紹介されることが、10年前よりも珍しいことではなくなってしまった今。取材されることにも撮影されることにも大半の人が慣れてしまった今。正直、鼻であしらわれる取材もあります。しかし、こんなふうに、分け隔て無く迎えてくれる温かさに、改めて感動しました。どんな人でももてなす気持ちを持って商売をしているんだろうな。20代、店舗突撃足軽兵隊だった頃の取材では、こんなお店が多かったな、と思い返しました。
取材を終えて吹雪の中、次の店に向かおうとして玄関を出ました。すると開店44年の夫婦二人三脚の奥さんが、おそらく今まで何十年もそうしてきたであろう態度で、玄関先まで見送ってくれて
「気をつけて、行ってらっしゃい」
と一言。心に響きました。
何気ない言葉だけど、それは、確かに、誰かの背中を押しているんだ。