死を学んだ男の話。

 

おたまじゃくしが死にました。すくってきた10匹ぜんぶ。

戦士に話したら「知ってるよー」となんともない顔で、風呂場掃除をしてくれたわけですが。

その風呂場掃除が終わって、部屋に戻るなり、布団を頭だけかぶって寝たまま直立不動になる戦士。そしてしくしくと泣き始めるではありませんか。

「お母さんが怒った…」という。

「いつ、どこで?ギフトの箱がしまらないのに、無理やりしめようとしたから怒ったこと?」(←いらいらその1)

「ちがう」

「お風呂場掃除で、バスマジックリンを思いっきりたくさんかけたから怒ったこと?」(←いらいらその2)

「ちがう」

といってさらにしくしく泣く。

「おたまじゃくしが死んでもたー」

って、私怒ってないがー、そんなことで。よくよく話を聞いてみると

「おたじゃまくしをとってきたとき、川にはやく逃がしなさいって、お母さんが言ったのに、言いつけを守らず、逃がさなかったので、結局死んでしまったことに、自分の浅はかさに泣き、おたまじゃくしがかわいそうでたまらない、この悲劇は自分が引きこしたことである」ということらしい。

冒頭の「お母さんに怒られた」という要素はどこにもありません、この一連の流れに。正確に言うなら「お母さんに注意された」でしょうに。

しかもおたまじゃくしを取ってきたのは、2週間も前で、うれしくってケースまで買ったのに、全滅。

その後、ワンワン泣き、泣いたまま風呂に入り、泣き止まないので

「そんなに泣くと、おたまじゃくしのお化け出てくるザ!」と言ったら、なおのこと地雷を踏んでしまったらしく、泣き声は増し、隣の悪女も震え始めた。

ちなみに悪女は、動いているおたまじゃくしが怖かったらしく、動かなくなったおたまじゃくしは怖くないので、イキイキとしている。

風呂上り、少し落ち着いた戦士の、眼に入る位置におたまじゃくしの死んだ水槽があったもんだから、こらえきれず、悲しみがわきおこり、おたまじゃくしの水槽の前で

「なんまんだぶー」といって手をあわせる戦士の姿。

ともあれ、いきものが死んで悲しい、育てるのは難しい、ということがわかってもらえてママンはよかったです。

おたまじゃくしは、近くの川に流し、お葬式をしてあげました。

 

 

 

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